シリーズ AI駆動開発実践入門 Part 2 / 4

AI駆動開発のプロンプト設計: 良い出力は良い前提から生まれる

AI駆動開発 開発プロセス

AI駆動開発で成果を安定させるには、プロンプトの書き方が重要です。

ただし、ここでいうプロンプト設計は、魔法の言い回しを探すことではありません。

大切なのは、AIが判断に使える前提をそろえ、出力してほしい範囲を明確にすることです。

この記事では、開発でAIに依頼するときのプロンプト設計を、実務で使いやすい形に整理します。

プロンプトは依頼文ではなく仕様の圧縮版

AIに渡すプロンプトは、単なるお願いではありません。

開発で使う場合は、仕様、制約、完了条件、レビュー観点を短くまとめたものです。

たとえば次の依頼は、AIにとって判断材料が少なすぎます。

この画面を作ってください。

どの技術を使うのか、どのコンポーネントを使うのか、バリデーションは必要なのか、APIはあるのか、エラー表示はどうするのかが分かりません。

AIは不足している情報を一般論で補完します。補完された内容がプロジェクトに合っていればよいですが、合っていない場合は手戻りになります。

プロンプトは、AIが勝手に補完しなくてよい状態をつくるためのものです。

最初に渡す5つの情報

開発タスクをAIに依頼するときは、最低限次の5つを入れると安定します。

目的:
何を実現したいのか

背景:
なぜ必要なのか

制約:
使ってよい技術、変えてよい範囲、避けたいこと

入力:
既存コード、仕様、エラー内容、画面イメージなど

出力:
設計案、コード、テストケース、レビュー観点など

この5つがあると、AIはかなり判断しやすくなります。

特に重要なのは制約です。

「新しいライブラリは追加しない」「既存のコンポーネントを使う」「API仕様は変えない」などを明示すると、現実的な提案になりやすいです。

まずは実装させずに整理させる

AIにいきなりコードを書かせると、前提がズレたまま実装が進むことがあります。

そのため、最初の依頼では実装ではなく、整理を依頼するのがおすすめです。

以下の要件を実装する前に、確認すべき仕様と影響範囲を整理してください。
画面、API、DB、権限、テストの観点で分けてください。

この段階で抜け漏れが見つかれば、実装前に修正できます。

AI駆動開発では、コードを書く速度よりも、間違った方向へ速く進まないことが重要です。

出力形式を指定する

AIの出力が読みにくいと、レビューに時間がかかります。

そのため、出力形式も指定します。

以下の形式で出力してください。

1. 前提の理解
2. 実装方針
3. 変更対象ファイル
4. 影響範囲
5. テスト観点
6. 不明点

出力形式を固定すると、比較やレビューがしやすくなります。

チームでAIを使う場合は、この形式をテンプレート化しておくと、AIの回答品質が安定します。

実装依頼では変更範囲を絞る

AIに実装を依頼するときは、変更してよい範囲を明確にします。

変更してよいファイル:
- src/features/login/LoginForm.tsx
- src/features/login/loginSchema.ts

変更しないでほしいもの:
- APIクライアント
- 共通Buttonコンポーネント
- 認証方式そのもの

この指定がないと、AIは親切心で広い範囲を変更することがあります。

小さく依頼して、小さくレビューする方が安全です。

悪いプロンプトと改善例

悪い例です。

エラーが出ているので直してください。

これでは、どの操作で出たエラーなのか、期待する挙動は何か、変更してよい範囲はどこかが分かりません。

改善すると、次のようになります。

ユーザー登録画面で、メールアドレス重複時に500エラー表示になります。
本来は「このメールアドレスはすでに使われています」とフォーム下部に表示したいです。

前提:
- フロントエンドは React
- APIは既存の /api/users を使う
- API仕様は変更しない
- 既存のバリデーション表示は維持する

出力:
- 原因の仮説
- 修正方針
- 変更すべきファイル
- テスト観点

このように書くと、AIは実装前に原因や方針を整理できます。

AIへの依頼を分割するテンプレート

一度にすべてを依頼するのではなく、段階を分けると精度が上がります。

Step 1:
要件を読み、確認すべき不明点を出してください。
まだ実装しないでください。

Step 2:
不明点が解消された前提で、実装方針を3案出してください。
メリット・デメリットも書いてください。

Step 3:
選んだ方針で、最小変更の実装をしてください。

Step 4:
変更内容に対するテスト観点とレビュー観点を出してください。

この流れにすると、人間が途中で判断できます。

AIを使うほど、人間の判断ポイントを前に置くことが大切です。

まとめ

AI駆動開発のプロンプト設計で大切なのは、特別な言い回しではありません。

目的、背景、制約、入力、出力を明確にし、AIが余計な補完をしなくてよい状態をつくることです。

いきなり実装させるのではなく、まず仕様、影響範囲、確認観点を整理させると、手戻りを減らせます。

プロンプトは、AIに渡す小さな仕様書です。

その意識を持つと、AIの出力はかなり扱いやすくなります。

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